相続が始まったら何からやる?手続きの流れと期限をやさしく解説

大切な方が亡くなった後、相続の手続きは何から始めればいい?3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月・3年——期限のある手続きを時系列でやさしく整理しました。慌てず一つずつ進めるための道しるべを、相続コンサルタントがお届けします。


「悲しむ間もなく、手続きに追われるなんて」——その通りなのです

大切な方を見送った後、ご遺族を待っているのは、静かに悲しむ時間……だけではありません。実際には、役所への届け出、年金や保険の手続き、そして相続——と、たくさんの手続きが押し寄せてきます。

「何から手をつければいいのか、分からない」
「期限があるって聞いたけれど、いつまでに何をすればいいの?」

ご相談の現場で、よくお聞きする声です。悲しみの中で、慣れない手続きに向き合うのは、心にも体にも大きな負担ですよね。

でも、大丈夫です。相続の手続きには「順番」と「期限」があり、全体の地図さえ持っていれば、一つずつ進めていけるものなのです。

今日は、相続が始まったら何を・いつまでにやるのかを、時系列でやさしく整理してお伝えします。今まさに直面している方にも、将来に備えたい方にも、道しるべになれば嬉しいです。

すべてを今日やる必要はありません。「いつまでに何を」を知ることが、いちばんの安心です。

問題の本質:手続きには「期限のあるもの」と「ないもの」がある

まず、いちばん大切な考え方からお伝えします。

相続にまつわる手続きは、数十種類にもなるといわれます。でも、そのすべてに厳しい期限があるわけではありません。大切なのは、「期限のある手続き」から順に押さえることです。

代表的な期限を、先に一覧でお見せしますね。

期限・時期主な手続き
死亡の事実を知った日から7日以内死亡届の提出(国外で亡くなった場合は3ヶ月以内)
おおむね14日以内世帯主変更届、健康保険・介護保険、年金関係など、該当する手続きの確認
3ヶ月以内相続放棄・限定承認の申し立て
※原則として、自分が相続人になったことを知った時から
4ヶ月以内準確定申告(故人の所得税の申告)
10ヶ月以内相続税の申告・納付
3年以内相続登記(不動産の名義変更)

※加入していた制度やご家族の状況によって、手続きの要否・期限・窓口が異なります。

相続手続きの全体像を、順番と期限で整理すると、次のようになります。

こうして並べると、「3ヶ月」「10ヶ月」あたりに大事な節目があることが見えてきます。逆に言えば、遺品整理や形見分けのように、期限のないものは慌てなくてよいのです。

期限のあるものから、順番に。それだけで、手続きの霧は晴れていきます。

時期ごとに見る、相続手続きの流れ

では、時系列で具体的に見ていきましょう。

【亡くなってすぐ〜2週間】役所と保険・年金の手続き

まず、死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡届を市区町村へ提出します。なお、国外で死亡した場合は、死亡の事実を知った日から3ヶ月以内です。多くの場合、葬儀社さんが提出を代行してくれますので、ここはあまり心配いりません。

死亡届の提出時には、あわせて「火葬許可申請書」も窓口に提出し、その場で火葬許可証が発行されます。これも通常は葬儀社さんが代行し、火葬場へ提出するところまで担ってくれますので、ご遺族が別途動く必要は基本的にありません。

その後は、おおむね14日以内を目安に、世帯主変更届、健康保険・介護保険、年金関係など、ご家族の状況に応じた手続きを確認します。なお、すべての方に同じ手続きが必要とは限りません。たとえば年金の死亡届は、マイナンバーの収録状況によって提出を省略できる場合もありますし、厚生年金と国民年金では期限も異なります。市区町村や年金事務所に確認すると安心です。あわせて、公共料金・携帯電話などの名義変更・解約も、少しずつ進めていきます。

ここでひとつ、実務のコツをお伝えしますね。死亡診断書(死体検案書)は、今後の手続きで内容の確認を求められることがあります。死亡届と一緒に原本を提出する前に、葬儀社さんに確認のうえ、コピーを数枚取っておくと便利です。ただし、手続きによって必要書類は異なりますので、提出先にも確認してくださいね。

【〜3ヶ月】遺言書の確認・相続人と財産の調査、そして「相続するかどうか」の判断

葬儀がひと段落したら、相続の本体に入っていきます。この時期にやることは、大きく3つです。

①遺言書があるかを確認する——ご自宅や貸金庫、公証役場、法務局(自筆証書遺言の保管制度)を確認します。公正証書遺言は、公証役場で必要書類を提示し、全国のデータから検索してもらうことができます。一般の方がインターネットで直接検索するものではありません。遺言書の有無で、その後の進め方が大きく変わります。

なお、ご自宅で自筆の遺言書が見つかった場合は、原則として家庭裁判所で「検認」の手続きが必要です。特に封印のある遺言書は、ご家族だけで開封しないよう注意してくださいね。ただし、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた遺言書は、検認が不要です。

②相続人を確定する——故人の出生から死亡までの戸籍をたどって、「誰が相続人か」を確定します。「うちは家族だけだから分かっている」と思っていても、戸籍を確認して初めて分かる相続人がいるケースが、実際にあるのです。

実は私自身、こんなクライアント様にお会いしたことがあります。ご家族は「相続人は自分たちだけ」と思っていらっしゃったのですが、亡くなった後に戸籍を取り寄せてみたら、思いがけないところに、もうお一人相続人がいらっしゃった——ということがありました。
家族が把握している内容と、戸籍上の関係が一致しているとは限りません。だからこそ、「たぶん大丈夫」と思わずに、必ずきちんと確認していただきたいと思います。

相続人にあたる方は、多くの場合、ご自身で戸籍を取得できます。ただし、続柄や取得する戸籍によって必要書類が異なるため、市区町村に確認すると安心です。

③財産を調査する——預貯金、不動産、有価証券、保険……そして、借金などのマイナスの財産も含めて、故人の財産の全体像を把握します。

なぜ3ヶ月以内にここまで進めたいのか。理由は、相続放棄の期限が、原則として「自分が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内」だからです。もし借金のほうが多ければ、相続放棄という選択ができます。でも、その判断は財産の全体像が分からないとできません。だからこそ、財産調査は早めが大切なのです。

【〜4ヶ月】準確定申告

故人に事業所得や不動産収入などがあった場合、亡くなった年の所得を、相続人が代わりに申告します。これを準確定申告といい、期限は4ヶ月以内です。年金収入のみの方など、申告が不要なケースもありますので、故人がこれまで確定申告をしていたかどうかを、まず確認してみてください。

ここで、少し先の話も含めてお伝えしたいことがあります。準確定申告が必要な場合は、4ヶ月という期限を考えると、早めに準備を始めましょう。内容が複雑な場合や、ご自身での申告が不安な場合は、税理士さんへ相談すると安心です。

そして、相続税がかかりそうな場合も、四十九日が過ぎたあたりから少しずつ準備を始めると安心です。財産の評価や書類集め、相続人どうしの話し合いには、思った以上に時間がかかります。
税理士さんへの依頼を考えている場合は、申告期限の直前ではなく、できれば数か月前までに相談しておくことをおすすめします。ぎりぎりになると、十分な確認や検討の時間を取りにくくなることがあるためです。早めに動き出すことが、結果的にご自身を助けてくれます。

【〜10ヶ月】遺産分割協議と、相続税の申告・納付

相続人と財産が確定したら、「誰が・何を・どれだけ相続するか」を相続人全員で話し合います。これが遺産分割協議です。まとまったら、遺産分割協議書を作成し、全員が実印を押します。
なお、法的に有効な遺言書があり、遺産の分け方がすべて指定されている場合は、原則として遺産分割協議は必要ありません。ただし、遺言書に記載のない財産がある場合などは、別途話し合いが必要になることがあります。

そして、財産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、10ヶ月以内に相続税の申告・納付が必要です。10ヶ月というと長く感じますが、話し合いが難航すると、あっという間に過ぎてしまいます。

ここで、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。実は、話し合いがまとまっていなくても、10ヶ月以内に申告そのものはしなければなりません

その場合、いったん法定相続分で取得したものとして申告・納税することになります。申告期限までに財産が分割されていないと、原則として、その時点では配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用できません。

ただし、申告時に所定の書類を提出し、期限後に遺産分割がまとまった場合は、後から特例を適用できる可能性があります。手続きや期限が細かいため、税理士さんへ早めに相談することをおすすめします。

10ヶ月という期限の中に、実は「相続人全員の合意」という、いちばん時間のかかる工程が含まれている——このことを、頭に入れておいてくださいね。

(参考:国税庁「相続財産が分割されていないときの申告」

【〜3年】相続登記(不動産の名義変更)

不動産を相続した場合の名義変更、いわゆる相続登記は、2024年から義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、過料の対象になることもあります。「実家をどうするか決まっていないから」と先延ばしにせず、早めに司法書士さんへ相談を。

このほか、預貯金の解約・払い戻しや、株式・自動車の名義変更なども、遺産分割協議がまとまった後に進めていきます。

つまずきやすい3つのポイント

流れは分かっても、実際に進めるとつまずく場所があります。よくある3つをお伝えしますね。

①戸籍集めが、思った以上に大変

相続人の確定には、故人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要です。本籍地を移していると、複数の役所から取り寄せることになり、これだけで数週間かかることも。今は郵送やコンビニ交付、広域交付制度も使えますが、慣れない方には負担の大きい作業です。

②財産の「見落とし」が後から出てくる

ネット銀行やネット証券など、通帳のない財産は見落とされがちです。後から財産が見つかると、遺産分割協議のやり直しや、相続税の修正申告が必要になることもあります。

③相続人どうしの話し合いが、進まない

実は、いちばん多いつまずきがこれです。手続きそのものより、「誰がどれだけ相続するか」の話し合いで、時間も心も消耗してしまう——。期限のある手続きが控えているのに話がまとまらないと、焦りがさらに関係をこじらせる、という悪循環も起こります。

手続きは「作業」ですが、遺産分割は「家族の対話」です。ここに、いちばん時間と心を使ってあげてください。

書類の手続きだけでなく、「誰に、どのように話を切り出せばよいか」を一緒に整理することも、相続コンサルタントの役割です。

今日からできる、小さな一歩

この記事を読んでくださっている方は、大きく2つに分かれると思います。今まさに相続の手続きに直面している方と、これから先に備えておきたい方。それぞれに、今日からできることをお伝えしますね。

今、手続きに直面している方へ

まずは、家にある書類を一箇所に集めてみてください。通帳、保険証券、権利証、年金の書類……。箱ひとつにまとめるだけで大丈夫です。財産調査の第一歩は、実はここから始まります。

そして、ご家族に「そろそろ、話し合いの場を持たない?」と声をかけてみてください。手続きそのものより、話し合いのほうが時間がかかります。早めに口火を切っておくことが、いちばんの近道です。

これから備えておきたい方へ

親御さんが元気なうちに、一つだけ聞いてみてください。「お墓ってどこにあるんだっけ?」「銀行、どこ使ってる?」——全部を聞き出そうとせず、今日はひとつだけ。それくらいのほうが、会話は自然に続きます。

そして、ご自身についても同じです。もし今、ご家族に「うちの財産、どこに何があるか分かる?」と聞かれたら、答えられるでしょうか。備えは、親のためだけでなく、ご自身のためでもあります。

手続きの負担は、「生前の備え」によって大きく軽くできます。
これは、ご相談を重ねる中で実感してきたことです。

まとめ:地図があれば、一つずつ進めます

相続が始まったらやることを、まとめます。

  • 死亡の事実を知った日から7日以内に死亡届を提出。国外で死亡した場合は3ヶ月以内。世帯主変更や健康保険などは、おおむね14日以内を目安に確認
  • 3ヶ月以内に相続放棄・限定承認を判断できるよう、遺言書の確認・相続人の確定・財産調査を早めに進める
  • 4ヶ月以内に、必要な場合は準確定申告。相続税がかかりそうな場合や、ご自身での判断が難しい場合は、早めに税理士へ相談を
  • 10ヶ月以内に相続税の申告・納付。話し合いがまとまっていなくても申告は必要
  • 不動産の相続登記は3年以内(2024年から義務化)
  • いちばんのつまずきは手続きではなく「話し合い」

期限だけ見ると急かされるようですが、大丈夫。全体の地図を持って、一つずつ進めれば、必ず終わります。そして、専門家に任せられる部分は、どんどん任せてしまってよいのです。戸籍集めや登記は司法書士さん、税金は税理士さん——それぞれの専門家と連携しながら、私は全体の交通整理と、ご家族の話し合いのサポートをしています。

「うちの場合は、何から始めればいいの?」と迷ったら、どうか一人で抱え込まないでくださいね。

なお、この記事でお伝えした制度や期限は、2026年7月現在のものです。相続の制度は改正されることもありますので、実際に手続きをされる際は、最新の情報をご確認くださいね。

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この記事を書いた人

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磯野 和恵

「ヒバリのそら」代表、磯野和恵(いそのかずえ)。

1970年5月生まれ。東京都練馬区出身の相続診断士。相続コンサルタント。

外資系IT企業の経理・秘書・コールセンター。
2009年 心理カウンセラー活動業務を経て、自身が経験した相続で生じる家族問題へのサポートを強く願う。

2021年に相続診断士の資格を取得。
2023年4月 相続コンサルティングオフィス「ヒバリのそら」を設立。
「笑顔の相続を迎えて欲しい」という願いを込め、家族全員が合意した遺言書を決める〝家族会議支援〟。

相続に強い税理士・弁護士・司法書士・不動産コンサルティング・ファイナンシャルプランナーとチーム連携して、本人の不安や困り事の相談に乗る。

本人も気づいていない想いや希望に、寄り添い引き出すヒアリング。

問題を見つけだし解決へのロードマップを示すことに定評があり、自身も天職とやりがいを感じている。

家族が笑顔で相続を乗り越え、助け支え合える関係で居続けられることを強く願い「みんなが笑顔になれる相続」へと活動する。