もうすぐ秋のお彼岸です。今年は9月20日が彼岸入り、23日が中日にあたります。彼岸入りの日は、「家族と終活を話し合う日」という記念日にも制定されています。
久しぶりにお墓の前に立って、手を合わせる。そのとき、ふとこんな思いがよぎったことはないでしょうか。
「このお墓、この先どうしよう」
私にも、ずっと頭の片隅に引っかかっていたお墓がありました。遠縁の親戚のお墓です。
今日は、そのお墓を片づけたときのことをお話しします。どこで止まってしまったのか。何を人に任せて、何を自分で決めたのか。
墓じまいは、頼まれて始めるとは限らない
墓じまいというと、家族で話し合って「そろそろ」と決めるもの、という印象があるかもしれません。
私の場合は、違いました。
そのお墓を買った親戚のご夫婦は、もう二人とも亡くなっていました。残っていた叔母は高齢で、手続きをお願いできる状態ではありませんでした。
誰にも何も頼まれてはいないんです。
ただ、ほかにも甥や姪はいましたが、遠くに住んでいたり、ほとんど交流がなかったりしました。
そのため、結果的に私が動くことになったのです。
墓じまいは、誰かに頼まれて始めるとは限りません。気づいたら、自分が動く立場になっていた。そういう形で当事者になることがあります。
墓じまいで遺骨をほかへ移すことを、法律では「改葬」といいます。厚生労働省の統計によると、令和6年度の改葬は全国で176,105件。前の年度より、およそ1万件増えています。同じように動いている人は、決して少なくないのです。
墓じまいが止まってしまう、3つの理由

誰が入っているのか、分からない
最初にぶつかったのは、「このお墓に、誰が入っているのか」という問題でした。
遠縁の親戚のお墓なので、叔母から「親戚の女性が入っているかもしれない」と聞いていたくらいで、確かなことは分かりませんでした。
法律では、墓地の管理者は帳簿を備えておかなければなりません。そこには、亡くなった方の名前や本籍、亡くなった日、埋葬した日などが書かれています。そして、亡くなった方の関係者から頼まれたら、その帳簿を見せるのを断れない決まりになっています。名義人でなくても、関係者であれば頼めるということです。
つまり、まず墓地の管理者に聞けばいい。ここまでは、多くの記事に書いてあるとおりです。
私も、最初は墓地に電話をして聞きました。
返ってきた答えは、「直接事務所に来てもらえれば、お教えできます」でした。
お墓も役所も遠く、なかなか行けない
そのお墓は、自宅から電車とバスを乗り継ぎ、バス停から墓所までもかなり歩く、遠い墓地にありました。
改葬の許可は、いまお墓がある市区町村の役所に申請します。お墓が遠ければ、役所も遠いということです。
しかも、改葬の手続きをする役所は、平日しか開いていませんでした。
なかなか行くことができず、時間だけが過ぎていきました。
振り返ると、止まっていたいちばんの理由は、お墓が遠く、なかなか行きにくかったことでした。
自分が、お墓の名義人ではなかった
私はもともと、そのお墓の名義人ではありませんでした。名義人は叔母でしたが、高齢だったため、まず叔母から私へ名義を変更し、その後の手続きを私が進めることになりました。
そのうえで、改葬の手続きを進めました。
改葬には、いまのお墓の管理者による「埋葬の証明」が必要です。自治体によっては、新しい墓地や納骨堂の「受け入れの証明」も求められます。
必要な書類や手続きは自治体によって違うので、お墓がある市区町村に、先に確かめておくと安心です。
私がやったこと、任せたこと

手続きは、任せられる
そんなとき、交流会で墓じまいに詳しい専門家に出会いました。そこで、墓じまいを専門にしている行政書士さんがいることを知ったのです。
行政書士は、役所に出す書類などを作ることを仕事にしている専門家です。私は委任状を書いて、お願いすることにしました。
お墓に誰が入っているのかの調査や役所の手続き、お墓の取り壊し、ご遺骨を取り出して乾燥させ、きれいにしてもらうこと、新しいお寺との交渉まで、専門家の方々にまとめてお任せしました。
正直、楽ちんでした。
もし自分でやっていたら、慣れない手続きのために、平日に何度も通うことになっていたでしょう。
もちろん、専門家に頼むとお金はかかります。自分でできる部分は自分で行い、難しいところだけ専門家に頼む方法もあります。
ご遺骨の行き先だけは、自分で決める
ただ、どうしても人に任せられないことが一つだけありました。
取り出したご遺骨を、どこへ移すかです。
行き先には、永代供養の共同墓地、納骨堂、樹木葬、海洋散骨、新しい個別のお墓など、いくつもの形があります。永代供養は、お寺や霊園が家族に代わって、将来にわたり供養や管理をしてくれる仕組みです。
海洋散骨にするのか。永代供養の共同墓地にするのか。これだけは、自分で決めるしかありませんでした。
私が選んだのは、自宅近くにある、永代供養をしてくれるお寺の個別墓です。
ほかの方と一緒に納める合祀型の共同墓や、納骨したあとはご遺骨を取り出せないタイプの樹木葬もあります。万が一、あとから誰かが「引き取りたい」と言ってきたときに、お渡しできるようにしておきたかったのです。
散骨も、一度行えば取り戻せません。そのことは以前の記事にも書きました。
実はこの墓じまいを進めるなかで、私たち夫婦は自分たちのお墓にも出会いました。詳しくは樹木葬の記事で。
お寺に伝える前に、知っておきたいこと
墓じまいを進めるなかで、お寺とのやり取りが必要になる場合もあるでしょう。
お寺の墓地にお墓があるなら、墓じまいは檀家を離れるきっかけにもなります。その際、「離檀料」と呼ばれるお金の話が出ることがあります。
離檀料には、決まった金額の基準がありません。金額の考え方は、お寺によって異なります。もし金額について気になることがあれば、まずはお寺とよく話し合ってみることが大切です。
それでも困ったときは、消費者ホットライン「188」に相談することもできます。
また、ご遺骨を別のお墓や納骨堂へ移す「改葬」には、いまのお墓の管理者による埋葬の証明など、必要な手続きがあります。
お彼岸のお墓参りで、ひとつだけ

もしこのお彼岸にお墓参りに行くなら、墓石に刻まれた名前と、墓地の管理事務所の連絡先を確認しておくと安心です。
スマートフォンで写真を撮っておくだけでもかまいません。墓石の側面や、横に立つ「墓誌」と呼ばれる石の板に、入っている方の名前や亡くなった年が刻まれていることがあります。
私が最初に止まったのは、「誰が入っているのか分からない」ことと、「現地に行けない」ことでした。お墓参りのついでに確認しておけば、あとで必要になったときの手がかりになります。
いますぐ墓じまいをする予定がなくても、こうした情報を手元に残しておくだけで、将来動くときに少し楽になります。
空が青く見えた
すべてが終わって、ずっと頭の片隅に引っかかっていたことが、ようやく一つ片づきました。
空が青く見えるというか(笑)、心のつかえが取れた気がしました。
もし、私と同じようにお墓のことで悩んでいるなら、専門家に一度相談してみることをお勧めします。すぐに何かを決めなくても、将来の道筋が分かっているだけで、気が楽になるかもしれません。
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