遺贈寄付という選択|子どものいない夫婦・おひとりさまの財産の残し方

子どものいないご夫婦やおひとりさまの財産、最後はどこへ?遺贈寄付という選択肢を、相続診断士が自身の体験を交えてやさしく解説。あなたらしい財産の残し方を、一緒に考えてみませんか。


「私の財産、最後はどうなるんだろう」——ふと不安になったことはありませんか?

「うちは子どもがいないから、私たちの財産って最後はどうなるのかしら」
「おひとりさまの私が亡くなったら、誰が何をしてくれるんだろう」

ふとした瞬間に、そんな思いが頭をよぎることはありませんか?

親の相続のことを考え始めると、自然と「では、自分の番は?」という問いが浮かんでくるものです。

特にお子様のいないご夫婦や、おひとりさまの方にとって、この問いはなかなか人に話しづらく、ひとりで抱え込みがちなテーマでもあります。

でも、どうか安心してください。財産の行き先を自分で決められるということは、実は「最後まで自分らしく生きる」ための、とても前向きな準備なのです。

今日は、その選択肢のひとつである「遺贈寄付(いぞうきふ)」について、私自身の考えも交えながら、やさしくお話ししていきますね。

問題の本質:「誰に残すか」ではなく「何のために残すか」

遺贈寄付とは、遺言によって、自分の財産の一部または全部を、NPO法人や公益団体、学校、自治体などに寄付することをいいます。

最近では、

  • 盲導犬の育成支援
  • がん研究・患者支援
  • 子ども支援
  • 動物保護活動
  • 災害支援

など、さまざまな分野の団体が遺贈寄付を受け付けています。単なる寄付ではなく、「自分が大切にしてきた想いを、未来へつなぐ方法」と言えるかもしれません。

「寄付なんて、お金持ちの人がすることでしょう?」と思われるかもしれません。でも実際には、数万円から遺贈寄付をされる方もいらっしゃいますし、金額の大小は関係ありません。

ここで少し立ち止まって考えていただきたいのは、相続の本質です。相続というと「誰にいくら残すか」という配分の話になりがちです。けれども、お子様のいないご夫婦やおひとりさまの場合、法律で決められた相続人が、ご自身の想いとは少し違うところにいるケースが少なくありません。

実は私自身、相続コンサルタントという仕事をしていることもあって、すでに遺言書を書いています。内容は「主人へ」。そして、もし主人が私より先に亡くなっていた場合は「私のきょうだいへ」となっています。

ただ最近、これを書き換えようと思っているのです。

「主人へ」は変わりません。それは、私たち夫婦で築き上げた財産だと思っているからです。けれども、きょうだいについては、少し考えが変わってきました。きょうだいはそれぞれにしっかり自立した道を歩んでいて、私の財産がなくても、これからも生きていけると思うのです。

もちろん、これまで私と関わり、支えてくれたことには、心から感謝しています。でも、その感謝は、お誕生日のお祝いなど、別の形でも伝えられるのではないかしら——そんなふうに思うようになりました。

そう考えると、私たち夫婦が老後に使ったあとに残った財産は、社会のために役立ててもらえたらと思うようになりました。

私たち夫婦は犬を飼っていたので、行き場を失う犬が一匹でも減ればいいなと思っています。

また、私は母をがんで亡くしたので、がんで苦しむ方々のために役立ててもらえたらーそんな想いを持っています。

遺贈寄付に関心を持つ方が、増えています

最近では、遺贈寄付という言葉を耳にする機会も増え、関心を持たれる方も少しずつ増えてきたように感じます。その背景には、こんな時代の変化があります。

ひとつは、子どものいないご夫婦や単身世帯が増えていること。「財産を残す相手がいない」と寂しく捉えるのではなく、「残したい先を、自分で選べる時代」になったのです。

もうひとつは、価値観の多様化です。「財産は家族に残すもの」という考え方は今でも大切ですが、「自分が応援したい活動に役立ててほしい」と考える方も増えています。

そして、「長い人生の中で助けてもらったこと、支えてもらったことへの感謝を、最後に社会へ返したい」という想い。こうした気持ちから遺贈寄付を選ばれる方も少なくありません。

なぜ遺贈寄付が選ばれにくいのか——3つの原因

相続のご相談をお受けする中で感じるのは、遺贈寄付に関心はあっても、実際に動き出せない方がとても多いということです。その原因は、大きく3つあります。

原因①:そもそも知られていない

遺贈寄付という言葉自体を知らない方が多く、「寄付=富裕層のもの」というイメージが根強くあります。実際には、ご自宅や預貯金の一部だけを寄付する方法もあり、特別な人だけのものではありません。

原因②:手続きが難しそう

遺言書が必要と聞くだけで、「難しそう」「自分には無理かも」と思ってしまう方も少なくありません。でも、ポイントを押さえれば、決して手の届かないものではありません。

原因③:寄付先を決められない

これが実は、いちばん多いお悩みです。私自身もまだ迷っています。

でも、この迷う時間こそが大切なのです。寄付先を考えることは、自分の人生で何を大切にしてきたかを振り返ることそのものだからです。

解決方法:遺贈寄付を「想い」から「かたち」にする3つのステップ

では、どうすれば遺贈寄付を実現できるのでしょうか。順番に見ていきましょう。

ステップ1:相続人を確認する

まずは、ご自身が亡くなったときに誰が相続人になるのかを知ることです。「自分の相続人が誰になるのか分からない」という方は、こちらの記事も参考にしてくださいね。
👉「うちは誰が相続人?複雑な家族でもわかる相続人の範囲と順位」

ステップ2:誰に・何を・どれだけ残したいか考える

全財産を寄付する必要はまったくありません。たとえば——

  • 預貯金の一部だけを寄付する
  • 老後資金を使った残りを寄付する
  • ご家族と寄付先に分けて残す

といった方法もあります。ご家族への想いと、社会への想いは、両立できるのです。

寄付先に迷ったら

「遺贈寄付に興味はあるけれど、どこに寄付すればいいか分からない……」という方も多いと思います。

実は私自身も、「昔犬を飼っていたから、盲導犬の支援団体がいいかしら」「母をがんで亡くしたので、がん患者さんを支援する団体もいいわね」と、まだ考えている途中です。

寄付先選びに迷ったときは、中立の立場で相談に乗ってくれる窓口を利用する方法もあります。

日本財団 遺贈寄付サポートセンター(https://izo-kifu.jp/)
遺贈寄付や遺言書づくりの無料相談ができ、終活のお悩みにも対応。子ども支援、福祉、医療、災害支援など幅広い分野から選べます。

全国レガシーギフト協会「いぞう寄付の窓口」(https://izoukifu.jp/)
全国各地に無料・中立の相談窓口があり、分野別に寄付先を探せます。動物保護、医療、教育、環境など、幅広い分野に対応しています。

また、特定の団体に直接相談することもできます。たとえば盲導犬の育成支援なら、日本盲導犬協会の遺産寄付の窓口(https://www.moudouken.net/support/kojin/contribution.php)でパンフレットの請求や個別相談ができます。がん分野や子ども支援など、ご自身が応援したい団体のホームページにも、たいてい「遺贈寄付のご案内」ページがありますので、まずはのぞいてみてくださいね。

「どこに寄付するか決める」のではなく、「自分は何を大切にしてきたのか」から考えてみると、寄付先も自然と見えてくるかもしれません😊

ステップ3:遺言書を作成する

遺贈寄付を実現するには、遺言書が欠かせません。せっかくの想いも、遺言書がなければ法定相続人にそのまま引き継がれてしまいます。特に不動産や高額な寄付を考えている場合は、より確実にご意思を残せる公正証書遺言がおすすめです。

また、こんな点にも気をつけてくださいね。

  • 寄付先の正式名称を、正確に書く(名称があいまいだと、想いが実現できないことがあります)
  • その団体が遺贈寄付を受け付けているか、事前に確認する(特に不動産は受け取れない団体もあります)
  • 残されるご家族・ご親族への配慮も忘れない

私自身、相続のご相談をお受けする中で、「もっと早く準備しておけば良かった」というお声を何度も聞いてきました。だからこそ思うのです。

遺言書は、あなたの想いを未来へ届ける「最後の手紙」だと思っています。

今日からできる、小さな一歩

「いきなり遺言書はハードルが高いわ」という方のために、今日からできることを4つご紹介しますね。

  1. 大切にしてきたことを書き出してみる
    家族、動物、医療、地域、子どもたちの教育……。あなたの人生のキーワードが、寄付先選びのヒントになります。
  2. 気になる団体を調べてみる
    ホームページを眺めるだけでも十分です。パンフレットを請求すれば、イメージがぐっと具体的になりますよ。
  3. 相続人を確認する
    何もしなければ、財産は誰にいくのか。それを知ることが、すべてのスタートラインです。
  4. 老後資金を確認する
    何より優先すべきは、ご自身とご家族が安心して暮らせること。老後に必要なお金を十分に確保したうえで、「使い切れなかった財産をどう活かすか」という視点で考えると安心です。

完璧な答えを出す必要はありません。「考え始めること」が、いちばんの財産の整理です。

まとめ:あなたの財産に、あなたの想いをのせて

遺贈寄付は、お子様のいないご夫婦やおひとりさまにとって、「財産の行き先を自分で選べる」心強い選択肢です。

  • 遺贈寄付は特別な人だけのものではなく、金額の大小も関係ない
  • 寄付先選びは、自分の人生を振り返るあたたかい時間
  • 想いをかたちにするには、遺言書が欠かせない

私自身も、まだ寄付先は決めていません。でも、「どんな想いを未来に残したいか」を考える時間は、とても豊かな時間だと感じています。

財産の残し方は、生き方の延長線上にある。私はそう思っています。

相続は、亡くなった後のお金の話だけではありません。
これまでの人生を振り返り、自分らしい未来を描くための時間でもあるのです。


一緒に、あなたの「想いの行き先」を探してみませんか?
そのためにもまずは、ご自身や大切なご家族が安心して暮らせることを第一に考え、その先にある選択肢の一つとして、遺贈寄付について考えてみてはいかがでしょうか。

※遺贈寄付を行う際は、相続人の遺留分や寄付先の受入条件なども関わってきます。遺言書を作成する際には、専門家へ相談されることをおすすめします。

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この記事を書いた人

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磯野 和恵

「ヒバリのそら」代表、磯野和恵(いそのかずえ)。

1970年5月生まれ。東京都練馬区出身の相続診断士。相続コンサルタント。

外資系IT企業の経理・秘書・コールセンター。
2009年 心理カウンセラー活動業務を経て、自身が経験した相続で生じる家族問題へのサポートを強く願う。

2021年に相続診断士の資格を取得。
2023年4月 相続コンサルティングオフィス「ヒバリのそら」を設立。
「笑顔の相続を迎えて欲しい」という願いを込め、家族全員が合意した遺言書を決める〝家族会議支援〟。

相続に強い税理士・弁護士・司法書士・不動産コンサルティング・ファイナンシャルプランナーとチーム連携して、本人の不安や困り事の相談に乗る。

本人も気づいていない想いや希望に、寄り添い引き出すヒアリング。

問題を見つけだし解決へのロードマップを示すことに定評があり、自身も天職とやりがいを感じている。

家族が笑顔で相続を乗り越え、助け支え合える関係で居続けられることを強く願い「みんなが笑顔になれる相続」へと活動する。